狩人は昨日したのと同じように街の中を歩く、ただし後ろを気にしながら。
 日陰の方で床に直に布を広げ嗜好品の店を立てている店主にチップを渡しこの街の裏手の山が歩いて超えられるのかどうかを聞いた。
 ここへ来たときはなんてことはない街道からこの街の正面に入った、点々と宿場や村があり大きめの街道だ。隠れ家のある町に早く戻りたいがその道は使えない、同業者の狩人もその道をよく使うのでおそらく会ってしまう。誰だろうと姿を見られたくないというのももちろんある。
 店主が言うには道は無いが山越えは出来そうとのことだった、人一人担いでいけるのかはわからないが切り立った渓谷というわけではないらしい、平気だろうと踏み少年をかくまっている部屋に戻る。

 この部屋は狩人が安い酒場の二階にでも勤めていそうな女性に金を握らせて借りた、しばらく借りるとだけ言ってある。机とベッドと床に血の染みが出来ているがそれでも、いろいろな含みを持たせて十分な金を渡したつもりだ。

「生きてるか」
 狩人はベッドのわきの小さな椅子に座り目を閉じたままの痛みに耐えている少年に声をかける。
「この街を早くでたほうがいい、歩けるか?」
「……」
 少年は意識はあるようで目を開けゆっくりこちらを向き目を細める、何か伝えたいことがあっても声は出なかった。
「無理なのはわかっている……ただ、ここを出ないと俺もお前も困ったことになる、我慢しろ」
 そう言うと狩人は立ち上がり残っていた痛み止め薬を無いよりはマシだろうと飲ませ、毛布で包むと抱きかかえ肩と片手でかつぐ。背で負うほうが歩きやすいが少年の腕にしがみつく力がないのでこの形になる。

「街中では何があってもうめくなよ」
 かつぐ布に手を当て一言ちいさく呟くと狩人は暗い中外に歩き出していく。

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