アレクセイの放浪


同じような仕組みと造形の仲間と一緒に
だれかの召使になれるよう訓練をしてきた、が
ある日製品チェック…定期健診で私に欠損が見つかったらしい。
爪だ。

骨の中に仕込まれている
魔力を留め体液を作る液体が少しづつもれている、というのだ。
私の爪の付け根が黒ずんでいるのがそうらしい。

製作者は慈悲深い、私たちひとりひとりに名前をつけ
なにか思いをこめて顔の造形だってされている。
即廃棄で潰される様なことはなかったが
訓練に参加することもこの先なく、
出口が外の世界にしか開いていない扉一つの
がらんどうの倉庫の片隅で一人今ここにいる。

時間が来たらここから出て行かなければならない。

仲間たちはそろそろどこかへ奉公へ行っただろうか、
どこで、誰の元で働いているんだろう。

(まだ時間はあるけど、ここから出て行こう)

ドドメの中を歩くのは大変だ。
自分がいま どっちの足が先に出て どう立っているのかすら忘れそうになる。

私と同じようなまだ形も色も残っている悪魔や、
もう形が崩れて中身だけがただよっているような悪魔、
倒れてはみ虫に齧られている死体。

途中ドドメの荒野をさえぎっている道がある、
形があるものは横切れるが
形のなくなってしまったものはその先には進めない。
もう“前へ歩く”しか覚えていないから
入れない境界線の道に向かって体をこすり付けているなにか、
少し感情が残っていれば悲しいのかその"なにか"はうずくまり嗚咽している。
その横にまみ虫がおとなしく死ぬのを待っている、
お行儀は、いい。
あいてが逃げられないのを知っているからなのか。

道を歩く、あのなかよりは楽だ、
気が休まり自分の体を見ると色抜けしてしまったように思える。

手の爪は半分まで黒くなっていた。
どこまで黒くなったら壊れるのか聞いておけばよかった。

道なりにだれかの世界に10ほど当たった。
しかし防壁がかけられていてドドメの悪魔は中に入れず、
門や扉や窓があっても中は見えない。

世界の近くでは道を歩いている悪魔もたまにはいた
こちらをみつけてはギョッとして来た世界へ走って逃げていく、
強い悪魔は悠然と何も見えないかのように横を通り過ぎていった。

道には形のある悪魔であっても
ドドメの悪魔はすべてとおさない関所のような場所がある。

そのときは道からはずれてドドメの中を歩いていかなければならない
道か、だれかの私が入れる世界にずっと当たらなかったら、、


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